2021/05/28 14:31


汁椀には、様々なサイズや形状、塗りなど、たくさんの種類があります。

そんな 汁椀の選び方とおすすめ をご紹介。選ぶ際の参考にしていただければと思います。



お椀のサイズは、◯寸◯分で表します。


まずは、お椀のサイズの見方からお話しします。

漆器のサイズは、◯寸◯分で表します。

一寸は、約3.03cm。一分は、約3.03mmです。

一分違うと、およそ3mmサイズが変わってきます。

手のサイズや、食べる量、盛り付ける料理により、サイズをお選びください。



川連漆器のお椀は、3寸9分(約11.7cm)が基本サイズ。



基本のお椀のサイズは、手の大きさに合わせて作られています。

元々、お椀の基本サイズは、3寸8分(約11.4cm)でした。

両手の親指と人差し指で輪を作った時のサイズが、およそ、そのサイズで、すっぽりと両手のひらに収まり、持ち上げやすいサイズと言えるでしょう。

しかし、時が経ち、食生活も豊かになり、体格も大きくなってくると、もう少し大きなサイズのお椀を求める声が増えてきました。

そのニーズに応えて、川連で作ったのが、3寸9分(約11.7cm)の汁椀です。

現在、川連漆器の基本サイズのお椀となっています。

「三寸九分 汁椀」は、1950年代、川連漆器業界が、東京進出を目指して統一デザインした、川連の汁椀の定番です。

川連では、通称、東京汁椀とも呼ばれています。

昔ながらの漆塗りのお椀で、これ以上のコストパフォーマンスの有る商品は、無いでしょう。

「三寸九分 汁椀」は、オーソドックスな汁椀ですので、漆器デビューにもおすすめです。

また、色の選び方ですが、普段使いの汁椀には、内側が朱色のお椀が多く使われています。

朱色は、傷や、底に溜まった味噌も、目立ちにいので、毎日の食事にどんどん使っていただくような方には、内側が朱色の汁椀がおすすめです。



ちょっと大きめな4寸(約12cm)サイズも、人気!



時代の流れにより、最近では、一回り大きめな4寸サイズの汁椀も人気があります。

食生活、体格がさらに変化し、食べる量や、使い方にも変化が現れたのでしょうか?

4寸サイズが主流と言っても良いくらい、ニーズが増えてきております。

豚汁や、具沢山の味噌汁など、ゆとりのある4寸サイズは、ゆったりと、料理を包んでくれます。

包容力があり、安心して盛り付けができますので、とても使い勝手の良いサイズです。

また、高台が高い、腰高椀は、指が入りやすく、持ち上げやすいのが特徴です。

シンプルな毎日のお味噌汁以外にも、汁椀を使いたい方には、「四寸 腰高 汁椀」がおすすめです。



手に馴染み、持ち上げやすい、3寸8分腰高汁椀。



また、私どものお椀で人気がある汁椀の1つが、「三寸八分 腰高 汁椀」です!

両手の平にすっぽり収まる3寸8分(11.4cm)のサイズで、高台が少し高くなっており、持ち上げやすいのが特徴です。

現在、主流となっている、3寸9分、4寸サイズのお椀より容量は少なめですが、手に馴染み、持ち上げやすい形状の、三寸八分 腰高 汁椀 は、使うほどにしっくりと手に馴染んでくる、そんな生活に寄り添うようなお椀です。

また、色は、オーソドックスな黒内朱と朱、黒内古代朱をご用意しています。

黒内古代朱は、内側を「弁柄」という鉄骨のサビ止めなどにも使われる顔料と、漆をまぜて塗っており、熱にも非常に強い被膜になっています。

丈夫で手に馴染むお椀ですので、毎日の食卓に是非、使っていただきたいお椀です。



摺り漆で、木目を活かした木目椀。



汁椀というと、真塗りのお椀が多いですが、木目を活かせる摺り漆で仕上げた、木目椀も魅力的です。

真塗りでは、防水や強度を高めるために、木地に何度も漆を塗り、ベースの木目は隠れてしまうのですが、

摺り漆は、木地に漆を何度も摺り込ませることにより、強度を持たせたつつ、木目を活かして仕上げることができます。

天然木の木目が、一つ一つ違った表情を見せ、世界に一つだけの柄を作り出します。

木の種類によっても木目の出方が全然違い、とても面白いです。

欅は、木目が綺麗に出てますので、綺麗な木目を楽しみたい方には「木目椀〈欅〉」がおすすめです。

また、栃は、細かい縞模様(漣紋、リップルマーク)や、木目と直行するように入る虎杢(縮み杢)など、特徴的な模様が出ることがある木材です。

「木目椀〈栃〉」からその様な特徴的な杢目のお椀を探して見るのも面白いです。

木目椀は、木のぬくもりが感じられ、木目が見えることでライトな印象でありながら、木の特徴を存分に楽しめるお椀です。

真塗りに比べると、強度は落ちますが、十分、使用に耐えられますし、汁物を入れる内側は、しっかりと真塗りで塗りあげているので、安心してご使用いただけます。

木目椀の大きさ形状は、三寸九分汁椀と同じになります。



縁が外側に反った、羽反椀。



縁が外側に反っている事から、「羽反椀」と呼ばれているお椀があります。

緩やかなS字のカーブは、上品で、プロポーションの美しいお椀です。

外側に反っている事から、口当たりも良く、汁物も緩やかに口に入って来ます。

また、お椀の中も見やすく、お味噌汁の具材など、見た目からも美味しさが感じられ、料理の味を一層引き立ててくれます。

料理が映える黒い器は、特に料理人に好まれます。黒い羽反椀は、見た目も上品で、お吸い物にもピッタリなお椀です。



汁椀のサイズ・形状 比較


汁椀のサイズ・形状を横から比較してみました。

三寸九分汁椀は、羽反椀、三寸八分腰高汁椀より直径が大きいですが、高さは、一番低くなっています。

腰高汁椀は、高台が高いと共に、お椀自体も深さがあります。

選ぶ際の参考にしてみてください。



汁椀の選び方とおすすめ のまとめ


基本的なお椀のサイズ、形状、表面仕上げのお話でした。

用途や、料理、手の大きさ、食べる量などに合わせて、汁椀を選んでみてください。

お店などで手に取る機会がありましたら、自分の手の大きさに合うか、持ち上げやすいかなど、実際感じながらお選びになってみてください。

漆器は、陶器や、プラスチックとは違い、特徴的なしっとりとした優しい質感があります。

感触というのはなかなか言葉では十分伝えにくいもので、実際手にとって、漆器の優しさを感じてみてください。

自分の手と目で確かめるのが一番ですが、なかなか、足を運んで選ぶことが出来ない時は、こちらの記事が参考になりましたら幸いです。


今回ご紹介したのは、

川連の基本サイズ「三寸九分 汁椀」

現在、主流の「四寸 腰高 汁椀」

両手に収まりの良い「三寸八分 腰高 汁椀」

木目を楽しむ「木目椀〈欅〉」

特徴的な木目の「木目椀〈栃〉」

縁が反って上品な「羽反椀」です。




今回ご紹介した汁椀は、佐藤善六漆器店の商品です。


〈佐藤善六漆器店について〉



1872年(明治5年)に佐藤善六漆器店として、創業。

秋田県湯沢市川連町にて、川連漆器(かわつらしっき)を製造販売しています。

川連漆器は、非常に丈夫で使い易く廉価なため、普段使いに適した実用的な漆器です。

花塗り(はなぬり)という高度な技法を使って仕上げているのが、川連漆器の特徴の一つです。

花塗りとは、塗った後に研いだり磨いたりせずに、漆の流れ方を予測しながら刷毛で塗り上げ、そのまま乾燥させる技法で、優しく柔らかな風合いに仕上げることができます。

製品の木地はすべて天然木で、天然の漆を一つ一つ手作業で丁寧に塗り上げています。

安心、安全な天然素材を使用し、受け継いできた伝統と技術を守りながら、現代のライフスタイルに合わせた器を作り続けています。





〈川連漆器の歴史〉



川連漆器の始まりは、今をさかのぼること約八百年前の鎌倉時代、源頼朝の家人で稲庭城主の小野寺重道の弟、道矩が、古四王野尻大舘(現在の秋田県湯沢市川連町大舘)に居住し、豊富な木材と漆を用い、家臣に内職として武具に漆を塗らせたのが始まりと言われております。

江戸時代初期、本格的に漆器産業が始まり、後期には藩の保護の元、椀・膳・重箱など幅広い生活用品がつくられ、沈金・蒔絵などの加飾が加わりました。

また、明治初期にはさらに新しい技術開発が行われ、今日の川連漆器の特色である堅牢な漆器が作られるようになりました。

昭和五十一年十二月に、国の伝統工芸品の指定を受け、今では全国でも有数な産地として成長しております。